実家の居間の窓の外から覗く4匹の子猫。

はじめて見つけたのは3年前、母の看病で実家と東京を行ったり来たりしていたある日、庭で「ミャー」というかすかな声を聞いた。私は子供の頃から犬や猫が大好きでこういう声は聞き逃さない。敏感に反応してしまう。どこかに子猫がいる!と思い耳を澄ましてあたりを探しまわると庭のブロック塀の向こう側、お隣の物置の下から聞こえている。子供の頃と同じように塀を乗り越え物置の下をしゃがみこんで覗いてみた。暗くて姿は見えない。一旦起き上がり顔を上げると、塀の上にものすごい形相の猫が一匹こちらを睨んでいた。母猫だ。間違いない。痩せて毛もガサガサで、でも目だけが力強い、子を守る母の姿だった。食べ物かなにかゴミのようなものをくわえていた。
家に戻ってその様子を母に話すと、「コレあげてきてみたら」と病院からもらっているがまずくて飲めないといってあまっていた栄養補給飲料を渡された。食べられない時はこれを一缶飲めば一食分のカロリーと栄養が補給できるというヤツ。母猫が飲めばきっとお乳もよく出るようになるだろう、そうすれば子猫も元気になるかもと、早速お皿にあけて庭に置いてみた。しばらく家の中から見ていると警戒しながら母猫がやって来て猛然と飲んでいった。それから毎日あげて、数日後の夜、初めて庭の植木の陰からカサカサと走る子猫の姿を目撃した。何匹かいる。4匹だ。毛の色や柄が全部違う。かわいい。猫たちはとても警戒心が強く私の姿を見るとササッと逃げてしまっていたが、しだいに誰もいない庭で無邪気に遊ぶようになっていった。
そんなある日、庭の大きな石の上で4匹の子猫と母猫、そしてもう一匹、大きな猫が一緒に寝ていた。この大猫、しっぽで子猫をあやしていた。模様が似ている。きっと父猫だ。家の中からそっと様子を見ていると、父猫は悠然と寝ていてしっぽで子猫たちを遊ばせていて、そのそばで母猫は警戒しながらまわりを見渡していた。猫一家だ。私はなんだか嬉しくて毎日様子を見ていた。

私の父は「いつかれては困る、追っ払ってくる。」と口では言っていたものの、いつの間にかにぼしや残り物の魚などをこっそりあげたりしていた。そのうち父猫のことを「パパらっち」と呼び、かわいがるようになった(パパラッチの意味を知っていたかどうかは定かではない)。パパらっちはどこかの家で飼われている飼い猫のようで日中やってきて、夕方になるとどこかへ帰っていく。この猫一家の中で唯一人に慣れていて呼ぶと寄ってくる。母猫と子猫たちはこれまでよほどつらい思いをしてきたのか、とても警戒心が強く全く近づいてこなかった。特に母猫は少しでも近づこうとすると「フーー!」と、ものすごい形相で威嚇する。子猫たちもそれをマネしていた。
そんなある朝、外に出ると、父が子猫の一匹を「よし、よし」と撫でていた。絶対に人間に近づかなかった子猫が父の足元でゴロゴロのどをならしていたのだ。私も、と思って近づくと逃げられた。いつの間にか父は子猫と仲良くなっていたのだった。4匹の子猫はその色と柄から「茶白」「白黒」「トラ」「そっくりさん(母ネコにそっくりだったため)」と名づけられ、「ママさん」と呼ばれ始めた母猫と、時々来るパパらっちと共に我が家の庭で生活するようになった。 ・・・・・・つづく

写真は玄関外でウロウロする猫一家。手前左がパパらっち。