ノロイの襲撃は毎日続いた。パパらっちは一歩も引かず傷だらけで戦っていた。
しかし、ある夜の激しい戦いの翌日、ノロイもパパらっちも姿を消した。ママさんと子猫たちだけがいつものように鳴いていた。何日経ってもパパらっちは来なかった。飼われていたと思われる家まで様子を見に行ってみたりしたが、やっぱりいない。どこへ行ってしまったのか。力尽きてしまったのか。ノロイもぱったり姿を見せなくなった。
それからしばらくして別のオス猫が時々やって来るようになった。子猫4匹の内、オスの3匹は次第に姿を見せない日が多くなり、やがていなくなってしまった。残ったのはママさんと白黒だけ。また子猫が生まれてしまっては大変だと、野良猫の避妊手術について獣医さんに問い合わせをしたりしていたが、そのうちにママさんも白黒もいなくなってしまった。

そして、しばらくして母が亡くなった。療養中の一年半、窓から猫たちの姿を見るのが楽しくて、落ち込みがちな毎日を随分和ませてくれた。そして母が亡くなるのと時を同じくして猫たちは消えた。不思議な感じがした。

葬儀の日、たくさんの人が集まっている中、庭の石の上に一匹の猫の姿を見た。白黒だった。臆病で家族以外の人がいると決して姿を見せなかった白黒が大勢の人を前にして隠れずに石の上に姿勢よく座り、じっとこちらを見ていた。あの光景は今もよく覚えている。
それから数ヶ月、猫の姿は一切見なくなった。あの猫たちは本当に実在したのだろうかと思うほど、ぽっかりと抜け落ちるようにいなくなった。あの一年半の間だけ我が家に来てくれていたようなそんな感覚さえした。

そして今年になってエフを連れて実家に帰ったある日、庭の石の上にママさんの姿を見た。以前に比べて見違えるほど優しい顔をしていた。一人暮らしとなった父が嬉しそうにキャットフードをあげていた。ママさんだけが父の住む家に戻ってきた。毎日、庭の石の上から父の姿をじっと見守っているようだ。